ボラカイツアーレポート
 

2000年4月30日〜5月4日

皆さん、ゴールデンウィークはどのように過ごされましたか? ダイビングショップ・ヒラキでは例年どおりのリゾートツアー。しかも知る人ぞ知る世界屈指のヨーロピアンリゾート、フィリピンのボラカイ島へ行ってきました!!(編集担当は引越しが忙しくて行けませんでした (T_T))
今回のレポートは海中編と陸上編の2本立てです。どちらも必読!!

海中編 by 古籏 克彦

陸上編 by 西 学美


ボラカイツアー 海中編

今回のボラカイツアーレポートは陸上編を西嫁(学美さん)が担当し、水中編を 私が担当することになりました。

ダイビングは、5月1日:2Div 5月2日:3Div 5月3日:2Div の 合計7Divです。

5月1日(MON) 晴れ

【1Div.】ポイント名:クロコダイル(ボートDiv
  <コンディション>
ホラー映画の1シーン?クロコダイルのオオモンJr.
気温:37℃ 水温:水面30℃/水中29℃
風向:SE 風力階級:0〜1/波浪階級:0〜1
透視度:15m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:20.3m/平均:11.7m 潜水時間:54分

今回1本目のダイビングである。

とても穏やかな海をクロコダイルに向かいボートは進む。 ポイント到着後ENし緩やかなな流れに漂いながら砂地に移動し、アキアナゴを見る。 彼らは体を懸命に延ばし流れてくる餌をほおばっていた。アキアナゴをあとにして砂地とサンゴ礁 の境を移動する。サンゴ礁にはチョウチョウウオ各種が泳ぎ回り、ホホスジタルミ・ タテキン・アザミカワハギ・カンムリニセスズメダイ等各種スズメダイ・シンデレ ラウミウシ等ウミウシ各種などに遭遇。そして、昨年白いオオモンイザリウオに会 った洞窟に到着。今回はオオモンの子供(体長:約50mm)が居た。洞窟には、 キンメモドキの群れ。オオモンを見たのち、来たルートを戻る。

途中、オドリハゼがおり、その奥にはなんとニチリンダテハゼが居るではありま せんか。因みに水深17〜18m位で

次に、再度砂地に行くとジョーフィッシュがキョロキョロ辺りを見回していた。 とても愛嬌のある奴である。そして、じっとしているハナイカ、続いて、クマドリ イザリウオに会いEXすべくアンカーに戻る。

アンカー下の岩にはフタイロカエルウオがおり最後まで気の抜けないポイントで ある。

1本目から楽しめたダイビングであった。やはり、クロコダイルは面白い。
ウミシダヤドリエビ。どこにいるか判るかな?
クロモドーリスというウミウシ。

【2Div.】ポイント名:フライデイズロック(ボートDiv)
<コンディション>
気温:37℃ 水温:水面29℃/水中28℃
風向:SSW 風力階級:0〜1/波浪階級:0〜1
透視度:13m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:17.9m/平均:14.0m 潜水時間:53分

本日2本目である。

アンカーロープ沿いに潜降し、大きな岩の根を目指す。ここは瓦礫が水底に広が っている。岩(たぶんこれがフライデイズロックなのだろう)の周囲にはミゾレチ ョウチョウウオが群れており人に慣れているのか、あっと言う間に囲まれてしまい 写真を撮ろうとするとレンズポートを突っつきに来て写真をとらしてくれないので ある。次に、この岩からちょっと離れたとこにある 根に移動する。移動中、ウミシダがのんびり歩いていた。不思議な植物?である。 このウミシダの中にウミシダウバウオやウミシダヤドリエビが潜んでいる。まるで、 ウミシダは彼らにとっては行き先不明のタクシーのようである。ウミシダを見た後 根に到着。ここにはカクレクマノミのファミリーが居るのだがこの子達は、顔だち が良くクマノミ界のモデルのようであった。また、岩に付いていたウミシダには、 コマチコシオリエビが居たがこれは写真が撮り難く粘れば撮れそうだが置いてかれ そうになったので諦めたのであった。

再度岩に戻り岩を一回りする。ここでは、スミレヤッコ・ニシキヤッコ・パープ ルビューティ・ヤシャベラ等ベラの仲間各種・クロモドーリス等のウミウシ各種な どFWには最適であった。 そして、アンカーに戻りEXするのであった。

5月2日(TUES.) はれ

【1Div.】ポイント名:ヤパック(ボートDiv)
<コンディション>
気温:35℃ 水温:水面29℃/水中27℃
風向:SSW  風力階級:0〜1/波浪階級:1
透視度:15m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:35.7m/平均:22.2m 潜水時間:26分

念願の大物ポイント「ヤパック」。サーフサイド前からボートで約20分程であ る。

大物期待でEN。即、潜降。大物待ちの棚を目指す。水深は深くなり水深30m で棚にたどりつき、待つ。まつ。マツ。ウエイト。回りは、ムレハタタテダイの大 群,アヤコショウダイの群れ,アカモンガラの大群,オグロメジロザメが中層を ウロウロ,ロウニンアジなどがいた。ここには、アケボノハゼも居るらしい。

そうこうしているうちに、DCは無情にも無減圧潜水時間0分を表示。

これで、棚から離脱しひたすら浮上。この間減圧停止指令が出たり消えたりと めまぐるしく変わる。水深20mあたりでDCも落ち着いたようだ。

そして、5mでの安全停止後EX。

【2Div.】ポイント名:プンタブンガ(ボートDiv)
<コンディション>
気温:36℃ 水温:水面29℃/水中29℃
風向:SSW 風力階級:0〜1/波浪階級:0〜1
透視度:15m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:19.2m/平均:14.3m 潜水時間:52分

本日2本目のダイビング。

瓦礫の原野にEN。しかし、所々にカイメンがあり、ここにはピンクスクワッド ロブスターがおり、マクロ撮影に力が入る。他にも、周囲には魚が多く、ナンヨウ ハギ,コガネキュウセン,タカサゴ,キツネウオの一種,ソラスズメ,ツブツブコ イボウミウシ,ゴールドスペックジョーフィッシュ,モンガラカワハギなどが見ら れた。

そして、珊瑚がある棚に移動し緩やかな流れに身をまかせ流されながら水中を 漂う。(美空ひばりの川の流れのようにを歌ってしまった。)

漂いながら水底に目をやるとツユベラ,ハタタテハゼが目に入る。すかさず、 写真撮影。振り返るとみんなは見えない。

写真を撮り終え再び漂いみんなに追いつく。ハナヒゲウツボも居たよ。また、ゴ マモン2匹が凄い勢いで追いかけっこしていた。あんな勢いでこっちに向かってこ られたらハウジングを差し出すしかないかな?

後は5m安全停止後EX。楽しかった。
オイランヨウジ? ちょっと違うような・・・
ご存知の方、情報下さい!!
アカホシカニダマシ

【3Div.】ポイント名:センポイント(ビーチDiv)
<コンディション>
気温:37℃ 水温:水面30℃/水中29℃
風向:SSW 風力階級:0〜1/波浪階級:0〜1
透視度:5m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:4.7m/平均:3.4m 潜水時間:70分

本日3本目は、ガイドのセンさんの名前が付いたビーチポイントである。

ここは、ボートで2分程のビーチにあります。浅く写真を撮るにはウエイト +1kgf必要です。

砂地と草地に分かれたポイントはとってものんびり潜れるのだ。 マクロ派にはたまらないポイントである。36枚撮りフイルムはあっという間に 無くなるのであった。砂地ではオイランヨウジウオ,フサギンポ,インドヒメジ, コロダイのお子様,ミナミホタテウミヘビ,ギンガハゼ(集中し過ぎてこの時グル ープに置いて行かれそうになった),トウアカクマノミのファミリーが各地に陣取 り、 このクマノミのイソギンチャクにはイソギンチャクモエビ,アカホシカニダマシが おりここで写真撮影中完全にグループから置いていかれた。とても焦り私の去った 後は煙幕が張られたそうな。(ごめんなさい_(._.)_)

砂地を後にし草地に行くと、ヘコアユが群れ、ちょっと気持ちがいいものではな いオオイガナマコ、ウミウシの仲間が見られた。

他にも今回は見られなかったがヒメヤマノカミ,ナマコガザミ,タツノイトコ, オオウミウマなどが居るそうです。

EX後寛いでいたら、別のグループがカミソリウオを見たと言うので急遽3点セ ットを身にまといカメラを持ってその場所までシュノーケリング。しかし、ウエイ トがオーバーウエイトでえらかったので、カミソリウオを探す時はオクトを借りて 潜り探すのであった。探すこと10分、いない。残念ながら見つけれませんでした。

残念だが、まっいいっか(1月に北川で見たし)、って感じでビーチを後にする のであった。それにしても長く潜ったものだ。
ウミシダに付くエビ、アンボイネンシス。
 
シンデレラウミウシ
ヒレナガネジリンボウ

5月3日(WED.) はれ

【1Div.】ポイント名:ヤパック(ボートDiv)
<コンディション>
気温:35℃ 水温:水面30℃/水中26℃
風向:SW 風力階級:0〜1/波浪階級:0〜1
透視度:15m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:33.6m/平均:21.9m 潜水時間:29分

今日でボラカイ最後のダイビング。今回2度目のヤパックである。

昨日と同様にEN後即潜降。

また棚で待つのであった。今回は、イソマグロが目の前を行ったり来たりと泳い でくれた。他には、昨日同様なお魚達が出迎えてくれた。マクロで撮ったマグロは 小さかった。

ソフトコーラルも棚に根付いているので待っている間これらを見て、マクロ生物 を探すのもいいかもね。でも、集中し過ぎると知らない間に大物が頭上を通過する ので注意が必要です。見逃すとフシ穴メンバーに任命されます。(ご用心を)

【2Div.】ポイント名:バリンハイ(ボートDiv)
<コンディション>
気温:35℃ 水温:水面30℃/水中28℃
風向:SW 風力階級:0〜1/波浪階級:0〜1
透視度:15m 使用タンク:AL(10L)
最大水深:29.4m/平均:17.3m 潜水時間:47分

ツアー最後のダイビングである。ハゼが目玉のポイントのようである。

EN後まずは、みんなで水中記念撮影。そして、水深29mにいるホタテツノハ ゼを見に行く。途中、砂地には水深20mにチンアナゴ、水深22mにアキアナ ゴ、水深26mにニシキアナゴが見られた。目的地に着きホタテツノハゼがペア で出迎えてくれた。しかし、恥かしがり屋なのか穴に直ぐに引っ込んでしまった。 待ちたかったが水深が水深だけに(しかも1本目はヤパックだったし)長居がで きない。残念だが、後ろ髪を引かれる思いでこの場所を後にする。次に水深26 m辺りでメタリックシュリンゴビーとご対面。遂に減圧停止指令がくっきり出て   しまった。水深を上げ、シンデレラウミウシを通過し、ヒレナガネジリンボウを 見る。この子は慣れているのか近づいても逃げない。他にもヤノダテハゼ,ハナ ヒゲウツボが居るらしいが今回は見に行かなかった。

他のグループはカミソリウオを2匹見たそうな。ウラヤマピー。

そして、減圧停止すべくアンカーに戻る。 しかし、アンカー下のウミシダにはアンボイネンシス(エビ)が居るらしく 1分間猶予をもらい写真を撮りに行く。(ガイドさんに感謝) 写真を撮り終え減圧停止。3m/4分であった。 ツアー最後のダイビングは充実したダイビングであった。 海は日に日に良くなってきているように思えた。 またこのバリンハイを潜りに来ようと思うのであった。

以上で、海中編は終わりです。 もし、ボラカイツアーがあれば奮ってご参加下さい。いろんな生物を見ることが できて面白いですよ。

2000年ボラカイツアー
海中編

ボラカイツアー 陸上編

はじめに

ボラカイ島は、パナイ島の北西部に浮かぶ、全長4kmにも及ぶホワイトサンドビ ーチが自慢のリゾートである。昨年のツアーは雨期であったため、残念ながらホワイ トサンドビーチを見ることができなかったし、台風が発生して、最終日にはダイビン グ中止という悔しい思いもした。

今回、乾期のツアーとあれば行かねばなるまい。しかし、私たちは夫婦での参加で ある。当然のことながらツアー代金は二人分である。一瞬迷ったが、ボラカイ島の本 当の姿であるビーチや海を見たいという思いには勝てず参加を決意した。

ツアー代金は貯金をはたいて何とか都合をつけた。昨年の経験からすると、お小遣 いとして必要なのは、食事代とエキストラダイビング代、チップ、空港使用料、そし てお土産代等である。この中で切り詰めるとすれば食事代である。ボラカイ島には、 1ペソのパン(通称ペソパン、1ペソ=3〜4円)が売られているいるので、西家の 食事はペソパンで過ごすことにした。“行きたい→とりあえず当面のお金はある→行 く”この短絡的な思考回路に周囲の人はあきれるばかりであった。

今回のメンバーは、平木さん、森さん、古籏さん、亀谷さん、西2人である。

4月30日

6:30 ショップに集合。私たちは、昨日器材をショップに預けておいたので、6:15 に「境川西の館」(西家の呼称)を出発し、身の回り品だけを持って徒歩でショップ まで行く。外の空気は少し冷たいが、さして気にならない。心は既にボラカイの海に あり、足取りも軽い。
謎の運び屋、ラーメン男。(写真左端)
しかし、写真撮るか?

奥さんのお見送りを受けて、名古屋空港へ向かう。ゴールデンウィーク中であるが、 時間が早いせいか、道はとてもすいており、早々に空港へ到着した。しかし、やはり ゴールデンウィークである。空港内は、出国する人や見送りの人で溢れている。

直接空港に来る亀谷さんとの待ち合わせ場所であるJALカウンター前にて待つ。 そこで私たちの目を釘付けにする人物が現れた。ビジネスクラスのチェックイン・カ ウンターで手続きを行っている彼は、カップラーメンの入った段ボール箱に紐をかけ て背負子のようにしている。係員の人もその背負子に興味を示している。日本からの お土産にカップラーメンは喜ばれるらしい。なるほど、周囲を見ればカップラーメン の段ボール箱を持った人がそこここにいるではないか。ところで、ファーストクラス、 ビジネスクラスのカウンター前には、それぞれ赤、青のマットが敷かれている。エコ ノミークラスの私たちは踏むことのできないマットの上に乗るふりをして、さりげな くカップラーメンの彼の横に並んで記念撮影をした。

定刻に名古屋を後にし、快適な空の旅を楽しむはずであったが、酔い止めを飲んで いた私は、眠くて眠くて食事中以外はずっと寝ていた。機内が蒸し暑く感じられ始め た頃、マニラへ到着した(12:50)。マニラの気温は35℃。日本との気温差は10℃以 上ある。

歓迎のレイを受け、入国審査の列に並ぶ。私たちの列の審査官のおばちゃんは、や る気があるのか、ないのか、とても手のろい。待つこと50分。荷物のターンテーブ ルでは、既に後続の到着便の荷物が回っており、私たちの荷物は放り出されていた。 両替を済ませ、係員の案内で迎えのバスに乗り(14:30)、ようやくホテルへ到着し た。

今回は、マニラからの国内線の乗り継ぎ時間に余裕がないのでマニラで一泊するこ とになっている。宿泊ホテルのホリディ・イン・マニラはリサール公園の東側に位置 し、マニラからの観光、ビジネスに便利なホテルであり、プールやジム、カジノなど の施設も充実している。

たぶん、観光目的でマニラへ旅行することはないと思われるので、これを機会にマ ラカニアン宮殿を見に行こうと計画した。しかし、30分以上待ってもチェックイン できず、更に40分以上かかるというのだ。部屋へ入れたのは、17:00に近かった。

部屋に入り、しばらくしてポーターが荷物を運んできた。ポーターは、先程私たち の荷物を邪険に扱った北村総一郎似の彼である。腹が立つので、チップは欲しそうに したら渡そうと言うことにした。北村総一郎はちょっとモジモジしていたがそのまま 部屋を出ていった。後で聞いたら、平木さんと古籏さんの部屋で30ペソ、森さんと 亀谷さんの部屋で40ペソのチップを渡したという。私たちはゼロであったが、6人 分で70ペソももらったのでまずまずではなかろうか。まぁ、よしとしよう?!

結局、マラカニアン宮殿へは行けず、(というより、休日であった)Robinson'sと いうショッピングモールへ行った。40分後に集合ということで自由行動になったが、 ショップ数は200軒以上あり、とても全部見て回れるはずもなかった。とはいえ、 怪しげな民芸品にしか興味がなく、おまけにお小遣いの乏しい私たちは時間を持て余 し気味であった。そこで、ミネラル・ウォーターを買うためにスーパーマーケットへ 入った。17ペソ、11ペソ、10ペソ、7ペソとコーナー毎に次々と安いミネラルウォ ーターを見つけ、最終的には10ペソ(しかも冷えている)に落ち着いた。

夕食は、フィリピン料理の「カマヤン」ヘ。カマヤンとはタガログ語で手を意味し、 手で食べるフィリピン伝統の食事スタイルが楽しめる店であったが、フォークとスプ ーンが出てきた。平木さんの情報収集により、お勧め料理を注文した。スープや豚足、 シチュー、ビーフン等どれも日本人の口に合うものでおいしかった。最後はデザート が出る予定であったが、これまた待っても出て来ない。注文した平木さんは人と会う 約束があると言ってホテルへ戻っているし…。残された私たちは、子供のようにただ ひたすら待つばかりであった。しびれをきらして精算を済ませた。全く今日一日待た されてばかりである。

ホテルへ戻ると、フロントでは2組の男女がチェック・インをしている。1組の女 性は、日本人男性からもらったお金の一部を後ろに立っている元締めとおぼしき男性 に渡している。夕食時に見た不似合いな男女2組もそうかなぁと思っていたが、これ はまさしくそうである。

ところで、私たちは、ホテルのウエルカム・ドリンクのチケットをもらっていたの で、「カフェ・コキーラ」へ行った。外から店の様子をうかがうと、みんな靴を履いて、 襟付きのシャツを着ている。私たちは、Tシャツ+短パン+ビーチサンダルである。 別の店にしようかと迷いながらも雰囲気の良いこのお店に足を踏み入れた。案内係の 笑顔のかわいらしい男性は、“Excuse me…”と言いかけたが、中から出てきた小太 りの男性が案内するように命じた。しかし、せっかく店内に入れてやったのに、オー ダーはウエルカム・ドリンクのコーヒーときた。“Only coffee?! ”と聞き返した小太 りはあきれていたに違いない。因みに私たちの席は柱の陰であった。

5月1日

朝食のメニュー

5:30にモーニング・コールを依頼し、6:00より「カフェ・コキーラ」にてブッフェ 形式の朝食をとる。種類が豊富でどれにしようか迷ってしまう。特に私好みのパンが 山と積まれていたのには感激した。

食事も終わりに近づいた頃、携帯電話を手にしたフィリピン女性を伴って日本人男 性が3人やってきた。私は嫌悪感を感じながらも好奇心には勝てず、ジロジロと不 躾な視線を送ってしまった。昨夜といい今朝といい、同じ日本人として恥ずかしいや ら、情けないやら…。中年男性だけで純粋にゴルフをしに来ている人たちは勘違いさ れそうでいい迷惑である。彼女たちの人なつっこい笑顔はチャーミングであったが、 何となく愚かな日本人をあざ笑っているようにも見えた。

ところで私たちは、昨夜同様Tシャツ+短パン+ビーチサンダル姿であったが、森 さんと亀谷さんはビーチサンダルお断りと言われ、靴に履き替えてきたという。古籏 さんはと言うと、昨夜、わざわざ服を着替えてカジノへ行ったが、靴を履いていなか ったので入店を断られたという。(古籏さんは、日本から草履で来たので、履き替え る靴がなかった。)昨夜も今朝も入店を許された私たちには、有無を言わせぬ何かが あったのであろうか…。

朝食後、チェック・アウトをして係員と共にホテルを後にし、国内線空港へと向か う。空港内待合室にはファーストフード店がある。ここでのお勧めは、ビーフンであ ったと昨年を思い起こしながら、搭乗案内を待つ。空港内は人がたくさんいるのに静 かである。日本のような騒々しさがないのである。

やがて搭乗時刻となり、飛行機へと歩いていく。昨年の経験からすると機内は蒸し 風呂である。覚悟を決めて中へ入ると、今年はエアコンが効いていた。とはいえ、や はり蒸し暑い。

離陸後しばらくして、おしぼり、そして待望のジュース&クッキーのサービスであ る。シンプルだけどとてもうれしいサービスである。昨年は離陸までの時間も長かっ たので、苦痛でしかなかった1時間のフライトも今年はあっという間に過ぎ、カテ ィクランへ到着した。

相変わらず空港らしからぬ空港であるが、周囲にはお店ができ、道も途中まで舗装 されていた。マイクロバスで港まで行き、そこから船に乗る。この間3回ポーターへ チップ(20ペソ)を渡さなければならない。昨日の北村総一郎の時のように渡さない というわけにはいかない。日本円にすれば、20ペソはわずかな金額である。しかし 物価が日本の1/8程度であることを考えると、ポーターへのチップ計60ペソは結構 な額であると思ってしまうのは私だけであろうか。

ホテルへ到着すると、懐かしいスタッフの顔が出迎えてくれた。ショップ内の器材 置き場が整備され、サーフサイド・バーには屋根がつけられていた。ガイドの人たち もちょっとずつ雰囲気が変わっていた。山崎さんはとてもヤセてしまっていて仕事の ハードさを伺わせていた。

ウエルカム・ドリンクのコーヒーをいただきながら、ダイビング等の説明を受ける。 本日のダイビングは13:00スタート。部屋の準備が調うまで昼食をとろうというこ とで、タイ料理の店へ行った。昨年は雨期であったため、リゾートのメインストリー トすら人が少なく、寂れた感じがしていたが、今年は人も多く、新しいお店もできた りして活気に満ちている。

5月2日

本日は、7:45に集合のため、6:00に朝食をとる。昨年同様、注文してから食事が 出てくるまでの時間が長い。しかし、ここはボラカイ。時間の流れを忘れて、優雅に リゾートライフを楽しむ人々は、それくらいのことでイライラしてはいけないのだ。 ブレック・ファーストのメニューはとてもシンプルで、コーヒーとパン、目玉焼き、 炒めたベーコン、そしてデザートである。昨年に比べ、デザートがプラスされていた ことに感動した。新鮮なマンゴーはとてもおいしかった。

昼食は、当初の予定通りペソパンを買いに出かけた。他のみんなはイタリアンのお 店へ行くと言っていた。ホテルのすぐ近くのおいしいと評判のイングリッシュ・ベー カリーでは、サンドウィッチが60ペソで売られていたが、私たちの所持金50ペソ では到底買えない。とぼとぼと歩いて次はミスター・ドーナッツ。@15ペソなので3 個買えるが、どちらが2個を取るかで喧嘩になりそうである。結局ペソパンへ向か った。2人分でしめて18ペソ。ドリンクはショップに準備されている無料のコーヒ ーを頂戴することにした。それを知った古籏さんは、あまりにも哀れと思ったのか、 シェイクを御馳走してくれると言った。ありがとうございまする。

古籏さんは、昨年のボラカイ島ツアーの頃、ダイブマスターの資格取得を決意し、 そして見事にその目標をクリアし、晴れてダイブマスター&スタッフの肩書きと共に 今回このツアーへ参加している。人間この世に生を受けてから与えられた時間は限ら れている。それがわかっていてもついつい無為に時間を過ごしてしまうものである。 しかし、彼の場合は常に目的意識を持ち、時間を有効に使い、精力的に生きている。 彼は、今回の私たちのツアー参加に伴う一連のやり取りを聞いてその計画性のなさに あきれ、西家の行く末を案じてくれているのだ。私たちは、古籏さんを師と仰ぎ、地 にしっかり足を着けて生きていこうと誓ったのである。

日没は、6:00〜6:15頃である。空が黄金色になったかと思うと、線香花火の火が 落ちるようにオレンジ色の太陽が水平線の向こうにスルスルと隠れていく。“今日も 一日が終わった”という少し虚しい気持ちになるが、落日の瞬間は感動的である。昨 年は初日にしか見ることのできなかった夕日を今年は毎日見ることができた。

夕日の美しさもさることながら、満天の星空も素晴らしい。星座の名前を知らない ので、天の川くらいしかわからず、ただ星が一杯としか表現できないのが残念である。 いつまでも見飽きることなく星空を見上げていると、日常生活のストレスがどんどん 溶けだしていくのがわかる。朝、目覚めたら食事をし、そして大好きな海へ潜る。目 の前に繰り広げられる青の世界とそこに住む魚たちに感動し、いつしか自分もその仲 間入りをしている。ダイビングが終われは、ビーチで横になったり、散歩をしたり、 思い思いに時を過ごす。やがて日は沈み一日が終わる。何と贅沢な一日であろう。

5月3日

本日はラストダイビングの日である。“もう終わり〜?”という感じである。マニ ラで一日を無駄に過ごしたので、余計に短く感じられるのかもしれない。やはり後半 の日程の5/2〜5/8の方が良かったのだろうか。海も日毎に透明度を増してきている ので、殊更そう感じる。しかも、前半の日程を希望した当の本人である玉ちゃん(安 江さん)はキャンセルしているときたから、私たちの腹の虫はおさまらない。

あっという間に2本のダイビングを終え、名残を惜しみつつ器材を洗って干した。 いつもそうなのだが、この器材を洗って干す時間がとても苦痛である。それ自体が面 倒だということもあるが、やはり、先程までの海の中の感動の余韻に浸りつつ、一歩 一歩また現実へと近づいて行くんだという切ない思いが交錯し、何ともいえぬ寂寥感 に包まれる時間なのである。

溜息混じりに器材を干して昼食を取りに出かけた。ホテルの前のビーチに沿ったメ インストリートの道端では、地元の人が店を広げている。貝殻やアクセサリー、ナッ ツ等。ふと見れば、平木さんと森さんがサングラスをかけた男性3人を相手に何やら 物色しているではないか。ローレックスのコピーを見ていたらしいが、地元人に妙に 溶け込んで違和感がなく、怪しげな雰囲気をかもし出していた。

私たちはというと、昨日は涙をのんで通り過ぎたイングリッシュ・ベーカリーの@60 ペソのサンドウィッチを買うことができた。本来ならペソパンを目指して歩いて行か なければならないのであるが、エキストラダイビング代をUSドルで精算し、お釣り をペソでもらったため、一挙にペソ持ちになってしまったのだ。それで、おみやげと してアイランド・スタッフ(サーフサイド・リゾートのダイビング・ショップ)のTシ ャツまで購入してしまった。その現場を古籏さんに目撃されて「金もないくせに…」 と咎められた。無理もない。そのくせ、図々しくもドリンクのバナナシェイクを古籏 さんにおごってもらっているのだ。少し小金を手にすると先のことも考えず、すぐ使 ってしまうのは貧乏人の悲しい性である。御馳走してもらったバナナシェイクはボリ ュームたっぷりでとてもおいしかった。

昼食を終えて満足感に浸りながら、シャワーを浴びて散歩へ出かけた。日差しは強 く、太陽の光はまばゆいばかりである。海の青と砂浜の白との鮮やかなコントラスト は目に痛いほどで、まさしくボラカイ島のキャッチフレーズ通りである。ただ、風が 止むととても暑い。せっかくシャワーを浴びても汗だくになってしまう。それもその はず、日中の気温は37℃もある。

昨年、最終日の夜になって初めて北の方が本当のリゾート地であり、私たちの泊ま っているところは違うという事実を発見したので、今回は是非北の方へ行ってみよう と歩き出した。全長4kmのビーチなので先端まで行けると思ったが、意外に遠く、 集合時間が近づいてきたので途中で断念した。

昨年は台風が発生する雨期だったので、ビーチ沿いには防風・防砂のための覆いが 施されていたが、今年はその必要もない。海に入って波と戯れる人、ビーチに横たわ って身体を焼く人、パラソルの下で本を読む人、等々。オイルマッサージを受ける人 もいる。しかし、その姿は、浜に打ち上げられたトドのように見えてならない。(失 礼極まりないが)ある巨大なトドは、2人がかりでマッサージを受けていた。料金は 2倍払っているのだろうか。気になるところである。

イタリアンの店で夕食を済ませ、お土産を買いに出かけた。今回の日程を希望しな がらもキャンセルとなった玉ちゃんへは私たちの怒りを反映し、海とは何の関係もな い「トンボ」のマグネットになってしまった。ごめんね、玉ちゃん。

5月4日

いよいよ最終日である。6:00起床、6:30より朝食を取る。最終日にして猫4兄弟 が揃った。ホテルに居着いている全員同じ柄の雄猫である。幼少の頃、人間にいじめ られ、人間不信に陥った猫が一匹いるが、それでも食事時になると餌をもらおうと寄 ってくる。猫に加え、ハエも寄ってくる。今度山崎さんが帰国された際に、ハエ取り 紙(最近見かけないが売っているのだろうか)を持ち帰ってもらおうということにな った。

朝食を終え、8:00にチエックアウト。今回はホテルの前から船が出る。海を見れ ば更に透明度が上がっている。玉ちゃんへのお土産の「トンボ」は羽をむしられるこ とになった!! ガイドの人たちのお見送りを受けて船に乗るが、遮るものが無くどこ までも見えているので、お互いにいつまでも手を振り続けなければならなかった。

港では岸近くまで船を寄せてくれたので濡れることなく上陸できた。足場の悪いと ころで40キロ近くの荷物をてきぱきと運ぶポーターには感服させられる。

カティクランでは荷物を開けて検査を受ける。昨年は人数が増えてきて途中からフ リーパスであったが、今回は鍵を開けてチェックを受けた。
なかなかに風情のある飛行機でボラカイに別れを告げる

待合室で待つこと1時間。飛行機が到着し、チケットを手に並ぶ。ふと見れば、新 婚旅行らしき韓国人のカップル。夫がチケットを紛失したらしく、あたふたしている。 妻は夫の鞄の中をゴソゴソ探しながら問い詰めている。しばらくして、ようやく見つ かり、事なきを得た彼らは最後尾に並んだ。そして、チケットを渡す係員に呑気に写 真を撮ってもらっている。すると今度はチケットを風に飛ばされて拾いに走っている。 全く緊張感の無い夫婦である。私たちは、タラップの上に立って振り返り、満面の笑 みを浮かべて彼らの記念写真に写ってやった。

飛行機は定刻に離陸し、お決まりのおしぼり→ジュース&クッキー→ミネラルウォ ーターのサービスが始まる。斜め前の座席に座っている古籏さんは、シートの肘掛け においた紙コップがジワジワと滑るのを見て、何やらぶつぶつとつぶやいている。聞 けば、「おぉ、まるで生きているようだ」と独りごちていたらしいのだ。さすが我ら が師匠は変わっていらっしゃる。しかし、とても魅力的で目が離せないのである。

無事マニラに到着し荷物を手に外へ出ると、ポーターが集結してくる。スキあらば 荷物を運んでチップをせしめようとしているのだ。荷物を奪われないようにしっかり と持ち、毅然たる態度で“No!”と言おう。ポーターは背番号付きの黄色のシャツ を着ている。要注意である。

出国審査を受け、帰国用の服に着替えた後は、各自昼食を取ったり、免税店で買い 物をしたりして過ごした。

出発ゲートへ行くと再び手荷物検査である。余りの厳重さに何か事件でもあったの かと思ってしまう。しばらくすると、見るからに怪しげな男が大きなスポーツバッグ を手にキョロキョロしながらやってきた。手荷物検査の係員に何やらべらべらしゃべ っている。そしてそのまま荷物を置いて姿を消した。怪しい!! 私たちは要注意人物 “あやしげウマヅラハギ”と称して(彼はウマヅラハギに似ているのだ)マークした。 搭乗時刻が近づいて彼は戻ってきたが、荷物を持っておらず、そして目に落ち着きが 無く、挙動不審であった。

名古屋までは追い風の影響を受けて定刻より少し早く到着した。入国審査を受け、 荷物を受け取り、ホッとするが、やっかいなのは税関である。係員をよく選ばないと しつこく質問され、荷物を開けさせられ、ひどい目にあう。やましいところが無いな ら平然としていればいいのだが、ここで楽しかった旅の余韻が一気に吹き飛んでしま うのである。不幸にも森さんは着替えも何もかもチェックされてしまった。しかし、 同じ列に並んだ例の“あやしげウマヅラハギ”は素通りであった。あの係員は“あや しげ”に弱みでも握られているのだろうか。と、私たちはいつもくだらない詮索ばか りしているので古籏さんに呆れられているのだ。

おわりに

かくして、楽しかったボラカイ島ツアーも無事終了し、家路についた。私たちが優 雅に遊び呆けている頃、日本では高校生による老女殺害や、高速バスの乗っ取り事件 等凶悪な事件が起きていた。一挙に夢から覚めて現実に引き戻されたという感じがし た。いや、夢ではない。私たちは、確かにこの目で海の世界を楽しんできたし、美し いビーチも堪能してきたのだから…。明日からはまたいつもの生活が始まるが、次の ツアーを心の支えに新しい気持ちで頑張ろうと思うのであった。

 

 
     

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